モータースポーツ

2025年インディ500の視聴方法!日程、テレビ放送/ネット配信予定

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最高時速380kmを超える世界最速レースの祭典「インディアナポリス500マイルレース」が2025年も開催されます。

F1モナコGP、ル・マン24時間レースと並ぶ世界3大レースのひとつで、毎年5月に行われる北米モータースポーツ界最大のイベントです。

日本時間 5月26日(月) 1:45 頃に決勝が行われる第109回インディ500の視聴方法や日程を詳しく解説します。

目次

2025年インディ500の日程

第109回インディ500は、例年通りメモリアルデー・ウィークエンドに開催されます。

主要なスケジュールを把握して、観戦準備を整えましょう。

イベント日程(現地時間)日本時間(参考)
練習走行開始2025年5月13日(火)5月14日(水)~
予選2025年5月17日(土)~18日(日)5月18日(日)~19日(月)
ミラーライト・カーブデイ2025年5月23日(金)5月24日(土)
レジェンズデー2025年5月24日(土)5月25日(日)
第109回 インディ500 決勝2025年5月25日(日)5月26日(月)1:45~

決勝レースのグリーンフラッグ(スタート)は、現地時間12:45 PM(日本時間 5月26日(月) 1:45 AM)頃の予定です。

なお、上記は主要な日程であり、詳細なタイムスケジュールは変更される可能性があります。

2025年インディ500の主な視聴方法

日本からインディ500を観戦するには、主に衛星放送やインターネット配信サービスの利用が必要です。

GAORA スポーツ

CS放送のGAORA SPORTSは、インディ500を含むインディカー・シリーズ全戦を放送しています。

2025年もインディ500決勝レースの生中継が予定されており、予選や合同テストリポートなども放送されます。

GAORA SPORTSは、以下の方法で視聴可能です。

  • スカパー!: 衛星放送または光回線を通じて視聴できます
  • ケーブルテレビ: Jや各地域のケーブルテレビ局を通じて視聴できます
  • ひかりTV: 光回線を通じて視聴できます
  • auひかり: 光回線を通じて視聴できます
  • GAORAオンデマンド: スマートフォン、タブレット、PCなどで視聴できるインターネット配信サービスです
  • SPOOXニコニコ生放送: GAORA SPORTSが提供するインディカー専用プランや、単話購入(PPV)で視聴できます

GAORA SPORTSをスカパーで視聴した場合の料金

スカパー!でGAORA SPORTSを視聴する場合、以下の料金が必要です。

  • GAORA SPORTS チャンネル料金: 月額1,320円(税込)
  • スカパー!基本料: 月額429円(税込)
  • 合計:月額1,749円(税込)

スカパー!には、GAORA SPORTSを含む複数のチャンネルを選べる「セレクト5」(月額1,980円+基本料)や、約50チャンネルが見放題の「基本プラン」(月額3,960円、基本料込)など、他のプランもあります。

加入月は視聴料・基本料ともに無料になるキャンペーンなどが実施される場合があります。

GAORA スポーツ 放送日程

  • 「第109回インディ500」予選~インディアナポリス~ 5月24日(土) 23:30 ~ 5:00
  • インディ500合同テストリポート 5月25日(日) 22:00 ~ 23:00
  • 「第109回インディ500」~インディアナポリス~ ①5月25日(日) 23:00 ~ 6:00(生中継) ②5月26日(月) 17:30 ~ 22:30(録画) ③5月29日(木) 13:00 ~ 18:00(録画) ④6月22日(日) 21:30 ~ 26:30(録画)

NHK BS

NHKBSでは、近年インディ500の決勝レースが録画放送されています。

2024年も放送実績があり、インディカー公式サイトの国際放送事業者リストにもNHK(インディ500のみ)が記載されています。

2025年の放送については、現時点で正式な発表は見当たりませんが、過去の実績から録画放送される可能性が高いと考えられます。

ただし、放送日時などの詳細は公式発表を確認してください。

NHK BS 放送日程

「完全放送 インディ500 佐藤琢磨 3度目の栄冠に挑む!」 5月27日(火) 午前0:10〜午前3:40(録画)

その他の配信媒体

INDYCAR LIVE

公式配信も有料なので、正規の無料ライブ配信なし。レースは後日録画のみ。

INDYCAR SERIES

公式YOUTUBE。ハイライト動画などを無料公開。

インディ500はどんな大会?

インディアナポリス500は100年以上の歴史を持つモータースポーツの最高峰レースのひとつです。

世界最速のスピードと激しいバトルが魅力です。

正式名称Indianapolis 500 Mile Race
通称インディ500 (Indy 500)
初開催1911年
開催地インディアナポリス・モーター・スピードウェイ (IMS)
コース1周2.5マイル (約4.023km) のオーバルトラック
レース距離500マイル (約805km)
周回数200周
開催時期毎年5月、メモリアルデー(最終月曜日)の前日の日曜日
位置づけF1モナコGP、ル・マン24時間レースと並ぶ世界三大レースのひとつ

1911年に初開催され、第一次・第二次世界大戦による中断を除き、100年以上にわたって続く、世界で最も歴史のあるレースのひとつです。

煉瓦敷きの路面から「ブリックヤード」とも呼ばれますが、現在はスタート/フィニッシュラインの一部を除きアスファルト舗装されています。

佐藤琢磨はどんなレーサー?

佐藤琢磨選手は、日本が誇る世界的トップレーサーです。

16シーズン目となるインディカー参戦を続け、インディ500では過去2度の優勝実績があります。

東京都出身で1977年1月28日生まれの佐藤選手は、学生時代に自転車競技でインターハイ優勝経験を持ち、19歳で鈴鹿サーキットレーシングスクール(SRS)に入校してモータースポーツのキャリアをスタートしました。

2001年にイギリスF3選手権チャンピオンを獲得し、マカオGPでも優勝。

2002年から2008年までF1世界選手権に参戦し、2004年アメリカGPで日本人過去最高タイ(当時)の3位表彰台を獲得しました。

2010年からアメリカ最高峰のインディカー・シリーズに参戦し、2013年ロングビーチGPで日本人初のインディカー優勝を達成。

2017年と2020年にはインディ500で優勝し、日本人初の快挙、そして複数回優勝(史上20人目)を達成しました。

主なタイトル・記録は以下のとおりです。

  • インディ500優勝 2回 (2017, 2020)
  • インディカー・シリーズ通算6勝
  • インディカー・シリーズ ポールポジション10回
  • イギリスF3選手権 チャンピオン (2001)
  • マカオGP 優勝 (2001)
  • マスターズF3 優勝 (2001)

アグレッシブなドライビングスタイルと、「No Attack, No Chance」をモットーとすることで知られ、F1とインディカーの両方で表彰台を獲得した唯一の日本人ドライバーです。

2025年シーズンも引き続きレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングからインディ500に参戦予定で、3度目のインディ500制覇を目指します。

また、ホンダ・レーシング(HRC)のエグゼクティブ・アドバイザーも務めています。

インディ500に関するよくある質問

インディ500をより深く理解するために、よくある質問とその回答をまとめました。

過去の優勝者は?

過去10年間(2015年~2024年)のインディ500優勝者は以下のとおりです。

開催年優勝ドライバー所属チーム(当時)エンジン
2024年ジョセフ・ニューガーデンTeam PenskeChevrolet
2023年ジョセフ・ニューガーデンTeam PenskeChevrolet
2022年マーカス・エリクソンChip Ganassi RacingHonda
2021年エリオ・カストロネベスMeyer Shank RacingHonda
2020年佐藤琢磨Rahal Letterman Lanigan RacingHonda
2019年シモン・パジェノーTeam PenskeChevrolet
2018年ウィル・パワーTeam PenskeChevrolet
2017年佐藤琢磨Andretti AutosportHonda
2016年アレクサンダー・ロッシAndretti Herta AutosportHonda
2015年ファン・パブロ・モントーヤTeam PenskeChevrolet

佐藤琢磨選手は2017年と2020年に優勝しています。

エリオ・カストロネベス選手は2021年の優勝で、A.J.フォイト、アル・アンサー、リック・メアーズに並ぶ史上最多タイの4勝目を達成しました。

ジョセフ・ニューガーデン選手は2023年、2024年と連覇を達成しました。

インディカーとF1の違いは?

インディカーとF1は、どちらもオープンホイールの最高峰カテゴリーですが、多くの違いがあります。

項目インディカー (IndyCar)F1 (Formula 1)
マシン開発シャシーはダラーラ製ワンメイク、エンジンはホンダ/シボレーから選択各チームが独自にシャシーや空力パーツを開発
(コンストラクター)
エンジン2.2L V6 ツインターボ (約650-700馬力)1.6L V6 ターボ ハイブリッド
(ERS含むシステム計 約1000馬力)
空力ロード/オーバルで異なる共通エアロキットを使用。
F1よりダウンフォースは少ない
各チームが開発する複雑な空力パーツ。
高いダウンフォース
安全装備エアロスクリーン(+HALO)HALO
パワーステアリングなしあり
重量F1より重い(ドライバー除く約751-771kg)ドライバー込みで約798kg
開催地主に北米世界各地
コースオーバル、ロード、市街地など多様主に常設のロードコース、一部市街地
スタート方式ローリングスタートスタンディングスタート
ピットストップ給油あり、タイヤ交換など含め7-8秒程度給油禁止、タイヤ交換のみで約2.5秒程度
最高速度オーバルでは時速380km/h超(F1より速い)約372km/h (記録)。
レース中は320-350km/h程度
ラップタイムロードコースではF1の方が大幅に速いコーナリングスピードと加速力で優れる
予算規模F1より低い高額な開発費。コストキャップ制度あり
参加台数レースにより変動 (インディ500は33台)通常20台
ポイント完走すればほぼ全車にポイント上位10台のみ

要約すると、インディカーは共通シャシーによるコスト抑制と接戦を重視し、オーバルでの超高速バトルが特徴です。

一方、F1は各チームの技術開発競争が激しく、空力性能に優れ、世界中のロードコースで速さを追求するカテゴリーといえるでしょう。

2025年インディ500 最終結果とレース内容

最終順位

順位カーナンバードライバーチーム名
1位10A.パロウチップ・ガナッシ・レーシング
2位28M.エリクソンアンドレッティ・グローバル
3位4D.マルーカスA.J.フォイト・エンタープライゼス
4位5P.オワードアロウ・マクラーレン
5位60F.ローゼンクヴィストメイヤー・シャンク・レーシング・W/カーブ・アガジャニアン
11位75佐藤琢磨レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング

レース内容

5月25日(日)、アメリカのインディアナポリス・モータースピードウェイで伝統のレース『第109回インディアナポリス500マイルレース(インディ500)』が行われ、アレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)が優勝を飾った。

今年は13日(火)から走行が始まり、18日(日)の予選でルーキーのロバート・シュワルツマン(プレマ・レーシング)がポールポジションを獲得。日本の佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は自己ベストとなる2番手グリッドを確保した。

決勝日の天候はくもり。気温は18度で、スタート前に弱い雨が降って1時間弱のディレイとなるが、現地13時25分にペースカー先導でウォームアップランが始まった。

しかし、スコット・マクラフラン(チーム・ペンスキー)が単独スピンでウォールにヒット。早くもリタイアとなり、アンダーイエローで迎えた5周目にグリーンフラッグが振られた。

ホールショットはシュワルツマン。しかし後方で単独クラッシュが起きて早々にイエローに。10周目のリスタートでは、オワードがトップに立った。追う琢磨も11周目に仕掛けて首位浮上するが、19周目に雨量が増えてイエローが宣言される。

ここで上位の各車は最初のピット作業へ向かう。31周目、ステイアウトしたアレクサンダー・ロッシ(エド・カーペンター・レーシング)らを先頭にレースは再開。46周目には、ロッシらがピットへ向かって琢磨がリードへ復帰する。そして62周目には2度目のピット作業を済ませ、ここでは琢磨が首位を守った。

73周目、ロッシのマシンが突如煙を吐いてピットへ向かい、まさかのリタイア。さらに83周目には、ピットロード内でスピンクラッシュが起きてフルコースコーションが導入されるなど、荒れ模様は続く。このイエロー中の87周目に各車は3度目のピット作業へ向かった。

しかし、琢磨とシュワルツマンが停止位置をオーバーラン。琢磨陣営はタイムをロスしつつも作業をこなして中団に合流した一方、シュワルツマンはウォールにヒットしてマシンを破損しリタイアとなった。

92周目のリスタート時には、気温が17度に下がり、低速走行も相まってタイヤとブレーキが冷えやすいコンディションに。再開時には3台が絡むクラッシュが起きて再度イエローとなる。また106周目にリスタートを迎えたが、中団でスピンが起きたために、ここは不成立となった。

あらためて110周目に再開し、ステイアウト組のデブリン・デフランチェスコ(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)らの後ろでピットイン組の争いが激化。コナー・デイリー(フンコス・ホーリンガー・レーシング)、デイビッド・マルーカス(A.J.フォイト・エンタープライゼス)、パロウらがバトルを展開する。

121周目にはデフランチェスコがピットへ入り、デイリーが首位へ。134周目には各車4度目のピット作業を着々と済ませていくなか、タイミングを遅らせていたライアン・ハンター-レイ(DRR-キュージック・モータースポーツ)がトップに立つ。さらに140周目にはハンター-レイがピットインするも、オーバーカットを決めてデイリーからトップを守ってみせた。

170周目ごろには、デイリーがペースをキープし切れずに苦戦しはじめ、マルーカスとパロウがパスすると、ここで上位各車はラストピットへ。しかし、ここでハンター-レイがコースインに手間取り、惜しくも優勝戦線から脱落してしまうこととなった。

優勝へ向けた展開作りが求められるラストスティントに入ると、パロウは早々にマルーカスをパス。ペースを上げ始めたオワードも背後に迫る。そして175周目には、ハンター-レイと近いスパンでピット戦略をこなしていたマーカス・エリクソン(アンドレッティ・グローバル)がオーバーカットを決め、パロウの目の前に合流して優勝争いのリードを奪った。

残り14周、各車がラストスパートのタイミングを図るなか、2番手パロウはエリクソンをパスし、早めに首位を奪い返す。以降、残り10周からはパロウ、エリクソン、マルーカス、オワードらが優勝争いの面々に絞られてきたが、後ろのふたりは仕掛けきれず、パロウとエリクソンの一騎打ちでファイナルラップへ。

周回遅れの2台が目の前を走るなか、パロウはターン1、2をクリーンに抜け、バックストレッチでは一気にインを絞って激しいバトルを演じたが、最終ターンを過ぎたタイミングで、後続のクラッシュによってイエローフラッグが掲示。パロウはそのまま悲願のオーバル初勝利、インディ500初制覇を達成した。琢磨は計51周の最多ラップリードを記録し、最終的には11位フィニッシュとなった。

2025年インディ500のおすすめ情報一覧

「朝のウォームアップは自信を失いパニックだった」と佐藤琢磨。ハイブリッドシステムを駆使しトップ12に進出/第109回インディ500予選1日目

5月17日、いよいよ第109回インディアナポリス500マイルの予選1日目が始まった。

前日のファストフライデーの後に、サンダーストームに見舞われたインディアナポリス・モータースピードウェイだったが、幸い大きな影響もなく快晴の朝を迎えた。

佐藤琢磨が前日に予告していたように、朝のプラクティスにほとんどのドライバーが参加したが、ふたつのグループに分けられたセッションでグループ1でメイヤー・シャンク・レーシングのマーカス・アームストロングがターン1で大クラッシュを演じてしまった。

コンディションは決して悪くはなかったが、各車ともに予選に向けてギリギリまでダウンフォースを削っていることは容易に想像できた。

グループ2に出走した琢磨も、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのエンジニアたちとじっくりとミーティングを重ねて予選の仕様を決めて来た。

4周ずつ2度のアテンプトをして、ベストスピードは232.678mphをマーク、7番手に付けた。プラクティス初日から雨やトラブルに足を引っ張られ、時間を失って来たが、予選日当日の朝にようやくトップ10圏内まで戻ってきた。

当然、琢磨の表情も明るいかと思いきや、マシンを降りてから何か思案している様子でエンジニアのエディ・ジョーンズとのディスカッションも、いつも以上に長かった。

2時間後に始まる予選までに最後のマシンの仕様を決めねばならず、気温や風向きをすべての要素を勘案して決断を下さなくてはならない。スピードこそ戻ったが、それが本物で予選で発揮されるものなのか、琢磨を悩ませていた。

11時から17時50分まで行われる予選。全34台が最低1回のアテンプトが保証されており、金曜日に行われたドロー(くじ引き)で出走順が決まっている。

琢磨は21番目のアテンプトとなっていた。11時に予選が予選が始まっても、琢磨が出走する時間までに気温や路面温度が上がっていたら、状況は悪くなってしまうが、今年は比較的涼しく安定したコンディションだったのは、運が味方していたのかもしれない。

だが、運に見放されたドライバーもおり、15番目に出走していたコルトン・ハータは、今年の鬼門となっているターン1でスピンしながらウォールに激突、マシンは逆さになりながらウォール沿いに滑っていった。ハータが怪我もなくマシンから降りて来たのは、今のインディカーが安全な証でもあるし、さらに今日の最後にはバックアップのマシンでアテンプトに戻って来たのは大きな驚きでもあった。

琢磨の前の20台ではマクラーレンのパト・オワード、チップガナッシのスコット・ディクソン、プレマのルーキー、ロベルト・シュワルツマンが上位を占めていた。

彼らは4周平均のスピードが232mphを越えていた。朝のウォームアップのタイムから見れば、琢磨にも届きそうな数字だったが、どこまでスピードを見せることができるか、場内は琢磨の75号車に注目した。

ウォームアップを219mphで走った後に計測が始まり、1周目232.437mph、2周目232.163mph、3周目232.050mph、4周目232.025mphときれいに232mph台で揃え、4周平均232.169mphをマークして、この時点で6番手につけた。順当に考えれば翌日のトップ12に進出できる可能性は高いポジションだった。

琢磨のアテンプトの後にはチップ・ガナッシのアレックス・パロウ、ペンスキーのスコット・マクラフラン、ジョゼフ・ニューガーデンらが平均233mphの驚速スピードを叩き出し、アクシデントのマシンを除いたマシンが1度目のアテンプトを終えた段階で琢磨は9番手のタイムになった。

トップ12の進出の可能性は高かったが、気温が下がって来た場合は、好タイムが出る可能性もあり、トップ12進出を目指すドライバーやバンプアウトされたくないドライバーは、タイムを出しに行くべくアテンプトの準備を始めた。

琢磨がもう一度ピットに現れ、タイムを捨てずにアテンプト出来るレーン2に並んだのは16時前だった。すでに10台弱のマシンが並んでおり、また自分のタイムを捨てて再挑戦するレーン1にもマシンが並んでいる。

17時前に琢磨がようやくコースイン。気温も安定していたのだが、大きくタイムを伸ばすドライバーは少なかった。

琢磨はGOサインと共にコースに出ると、1周目232.890mph、2周目232.839mph、3周目231.710mph、4周目232.226mph、平均232.415mphと自らのタイムをわずかに上回って見せた。

ライバルがタイムアップに苦戦する中では、上出来の結果。ポジションも8番手にひとつ上げた。その後、AJフォイトのデイビット・マルーカスにタイムを上回れ、また9番手に戻ってしまったが、トップ12入りは揺るぐことなく、琢磨は無事に予選2日目に進むことになった。

「昨日までのセッティングを見直して朝のウォームアップで試したのですが、4周のラップを完璧に終えていなくて、ちょっと自信がなくなるというか、パニックしてました。けど、エンジニアのエディとみんなと相談して、1回目のアテンプトに臨みました」

「そこで良いタイムが出て自信が戻ったし、2度目のアテンプトにも臨むことが出来ました。この予選がうまくいったのは、ハイブリットのディプロイとリージョンをうまく使うことが出来たからで、それがうまくいってなかったら、このタイムは出てなかったでしょう」

「エンジニアのみんなも喜んでくれました。明日はトップ12ですけど、このライバルの中でトップ6に残るのは大変だと思いますけど、なんとか残ってフロントロウ目指して頑張りたいですね」

 自信を失いかけていたというのは、予想外のコメントだったが、思い返せば大クラッシュの後に、マシンのトラブルもあり、十分に走れていないのだから、タイムが出るまで自信が取り戻せなかったのは当然かもしれない。

しかし、ベテランの経験と新しいハイブリッドの攻略がトップ12への進出を可能にした。明日のトップ6でも何か起こすのではないかと期待してしまうのは、インディ500を2度制覇したチャンピオンへの敬意だと思って欲しい。

「やりましたよ!」佐藤琢磨、インディ500予選2番手で自己ベスト更新。最前列から3度目の優勝狙う

第109回インディアナポリス500マイルレース(インディ500)の予選2日目は、最後に劇的なドラマが待ち受けるインディ500らしい1日だった。

レイホール・レターマン・ラニガン(RLL)の佐藤琢磨は、今年16回目の出場となるが過去3年間はトップ10以内で予選を通過しており、インディ500ファンの間では琢磨のアテンプトの突進ぶりは、注目のひとつでもある。

ただ今年について言えば、予選までも浮き沈みが激しく決して楽な戦いをしているわけではなかった。予選1日目も9番手で通過したものの、チーム・ペンスキー、チップ・ガナッシ・レーシングらが圧倒的なスピードで凌駕しており、ファスト12から次のステップになるファスト6に進むのは、現実的には至難の技だった。

「予選1日目を終えて、現実的にはチームと話してもファスト6になるのがターゲットでしたし、12台の顔ぶれを見ても、ファスト6に入るのはかなり厳しいと思ってました」と琢磨はいう。

予選2日目のファスト6にチャレンジする12台は、ペンスキー3台、チップ・ガナッシが2台、アロウ・マクラーレンが2台、アンドレッティ・グローバル、RLL、メイヤー・シャンク・レーシング、A.J.フォイト・エンタープライゼス、プレマ・レーシングが各1台という内訳だった。

13時からの予選前のプラクティスでは、昨年ポールのスコット・マクラフラン(チーム・ペンスキー)がターン2でクラッシュし、大ダメージを負ってしまう。ファスト6までのインターバルにバックアップカーの準備が間に合うとは思えず、これで1台が姿を消したことになる。

琢磨はこのプラクティスの間に2度コースインするが、満足に手応えを感じてはいなかった。「いろいろ試したかったけどあまり速くないねぇ(笑)、さて予選はどうしよう? なるようにしかならないけど」と苦笑いする。

16時になりプラクティスから2時間のインターバルを置いて、12台がアテンプト順に並び予選が始まった。まずはアンドレッティのマーカス・エリクソンからコースイン。琢磨のアテンプト順は4番目だが、予期せぬハプニングが起きたのは、その最中だった。琢磨の目前にいたペンスキーのウィル・パワーがリヤウイング下のテザーの取り付け位置の加工が車両違反と判断され、ウィル・パワーとペンスキーのチームメイト、ジョゼフ・ニューガーデンは失格となり、アテンプトの列から外されてしまった。

前代未聞の出来事に騒然となったものの、淡々と予選は続き、琢磨の順番はあっという間に回ってきた。朝のウォームアップよりも気温は少し上がっていたが、琢磨は勢い良くコースインしてアテンプトに入った。

1周目231.937mph、2周目231.880mph、3周目231.376mph、4周目231.550mphで、4周平均231.686mphをマークして、まずはトップに立つ。

琢磨のタイムを上回ったのは、メイヤー・シャンクのフェリックス・ローゼンクヴィストがトップタイムで、次にマクラーレンのパト・オワード、プレマで乗るルーキーのロバート・シュワルツマン、チップ・ガナッシのスコット・ディクソン、アレックス・パロウの5台で、琢磨は6番手ギリギリでファスト6に進むことができた。

トップ12予選の時点でペンスキーの3台がいなくなったことの影響は大きい。だがルールはルール。琢磨はファスト6進出を喜びながらも、すぐにマシンのセッティングを、相棒エンジニアのエディ・ジョーンズと練り始めていた。

18時という遅い時間に最後のファスト6が始まった。まずは6番手で通過した琢磨からのアテンプト。陽が傾き気温も少し下がって条件は良くなっていた。

場内の拍手を受けながら琢磨の75号車はコースインしていく。場内の観衆が見つめるなかで琢磨の計測が始まった。

琢磨の1周目は233mphの大台を越え、場内は大歓声に包まれた。1周目233.024mph、2周目232.308mph、3周目232.552mph、4周目232.030mphとうまくタイムを揃え、平均232.478mphのタイムをマークする。

リヤウイングも寝かせてギヤを変えて、というセッティングの変更が功を奏した。琢磨はピットボックスに戻りマシンを降りると、クルーのひとりひとりと握手を交わした。

琢磨の後に5台アテンプトしたものの、琢磨のタイムを上回ったのは、なんとプレマのシュワルツマンだけだったのだ。コンディションが変わった影響もあろうが、チップ・ガナッシのディクソン、パロウらが琢磨のタイムを上回れなかったのは、意外でもあった。

ファスト12からタイムアップできたマシンも少なく、コンディションに合わせた琢磨とチームのコンビネーションが2番手フロントロウのポジションを獲得した。これは琢磨自身が持っている日本人予選最高位3番手(2020年)を更新するもので、2度目のフロントロウからのスタートになる。

「やりましたよ! 本当はポールポジション取りましたって言いたいところだけど2位でした(笑)。でもエンジニアとクルーのみんなが良く頑張ってくれたので、チームのおかげです。予選までも順調に来ていたわけではなかったし、行ったり来たりしながらの状態でしたけど、一歩一歩進んで来て頑張ってきた結果だと思います」と琢磨。

「リヤウイングの角度とかファスト12の時に他のマシンを見ながら確認して、コクピットで待っている時に、まだ行ける! と話しながら、最後に変更したし、ハイブリッドもうまく使えたと思います。やっぱりここまで速かったチップ・ガナッシ勢を最後に上回れたのは素直にうれしい。でも決勝に向けてはマシンもまだまだだし、月曜とカーブデイの2回のプラクティスでマシンをしっかり仕上げないといけないですね」と、喜びながらも兜の緒を締めるコメントだった。

悲願のポールポジション獲得はならなかったが、優勝の2017年と2020年を思い起こさせる予選はエキサイティングだった。決勝に向けては楽観はできないと琢磨本人が言っても、日本のファンは来週日曜の決勝を期待せずにはいられないだろう。

違反改造の2台にペナルティ。2連覇ニューガーデンと僚友パワーが最後尾スタートに/第109回インディ500

5月13日から25日にかけて、アメリカのインディアナポリス・モータースピードウェイで開催されている伝統のレース『第109回インディアナポリス500マイルレース』。そのなか、18日の予選2日目に出走していたチーム・ペンスキーの2号車(ジョセフ・ニューガーデン)と12号車(ウィル・パワー)に、改造されたアッテネーター(衝撃吸収装置)が発見されたことを受け、規則違反を認定した。

予選2日目の時点では、インディカーはこの改造が規則14.7.8.16に違反すると判断し、両車両を上位12台が進出できる予選2日目の最後尾に配置していた。しかしさらなる調査の結果として、第109回インディ500におけるスタートポジションを変更し、2号車と12号車は32番手と33番手からのスタートとなることが発表された。

「インディ500の完全性は最優先事項であり、改造の事実は明白だ」と、シリーズのJ.ダグラス・ボールズ会長は述べ、違反に対する厳格な対応を強調。さらに、両車のチームストラテジストはレース出場停止となり、予選ポイントの剥奪、10万ドルの罰金、ピットポジション剥奪という厳しい処分が下された。

一方、チーム・ペンスキーの3台目である3号車(スコット・マクラフラン)については、午後の練習走行中にアクシデントが発生していたが、インディカーがアッテネーターを押収し調査した結果、改造はされていないことが確認された。これを受けて、3号車は10番手からのスタートが決定している。

チーム・ペンスキーは、ペナルティの発表を受けて声明を発表。「判定結果と体制への影響には失望しているが、ペナルティを受け入れる」とし、今週後半には今後のチーム体制について発表する予定であると明かした。

インディカーは、シリーズ全体の公平性と競技の完全性を守るための対応を続けており、今回の決定がスポーツの公正さを確保するための重要な判断であることを強調している。

インディ500でのスキャンダルを受け、チーム・ペンスキーが3名を解雇「誠実さ以上に重要なものはない」と総帥

チーム・ペンスキーは、インディアナポリス500マイルレースの予選におけるスキャンダルを受け、長年チームを率いてきたティム・シンドリックを含む3名が、この組織から解雇されたことを確認した。

5月21日、チーム・ペンスキーは、インディカー・マネージングディレクターであるロン・ルゼウスキー、ゼネラルマネージャーのカイル・モイヤー、そしてインディカー・チームのプレジデントを務めてきたシンドリックの解雇を発表。チームオーナーのロジャー・ペンスキーは声明の中で、今回の解雇は「必要な変更」だと述べている。

「我々のスポーツとレースチームの誠実さ以上に、重要なものはない」とペンスキー。

「過去2年間、我々は組織的な過ちを経験し、必要な変更を余儀なくされた。ファンの皆様、パートナーの皆様、そして組織の皆様にご期待に添えなかったことをお詫び申し上げる」

このペンスキーからの解雇は、インディ500の予選ファスト12を前に、2台のマシンのリヤ・アッテネーター(衝撃吸収装置)を違法に改造していたことが発覚してから数日後に行われたもの。ジョセフ・ニューガーデンとウィル・パワーは、当初シュートアウトへの参加を禁止され、決勝スターティンググリッドは最後尾へと移された。

チームには20万ドルの罰金も科されている。さらに、解雇される前、シンドリックとルゼフスキーは、それぞれニューガーデンとパワーのレースストラテジストとして、今週末のレースへの出場停止処分を受けていた。

昨年のシーズン開幕戦、セントピーターズバーグでニューガーデンとスコット・マクラフランがプッシュ・トゥ・パス・ブーストシステムを違法に使用していたことが発覚して以来、ペンスキーのインディカー運営チームが論争に巻き込まれるのは、わずか1年あまりでこれが2度目となる。

ニューガーデンとマクラフランは当時、1位と2位のフィニッシュ資格を剥奪され、シンドリックとルゼフスキーはそれぞれ2レースの出場停止処分を受けていた。

今回の3人の中で最も注目を集めたシンドリックの退任は、1999年にチーム・ペンスキーに加わり、さまざまなシリーズと競技を網羅してきたこの組織における非常に成功した在任期間の終焉を告げるものだ。

スポーツカーレースの分野では、シンドリックはプレジデントとして数々の成功したプログラムを監督した。その中には、WEC世界耐久選手権とIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の両方で優勝を果たしたポルシェ・ファクトリーLMDhプログラムも含まれている。

シンドリックは今年初めに日常的な活動を縮小していたが、引き続きインディカー・プログラムの社長として活動していた。

佐藤琢磨は2番手から。第109回インディ500のスターティンググリッドが決定【全車ギャラリー】

■第109回インディアナポリス500マイルレース スターティンググリッド

  ROW/INSIDE/MIDDLE/OUTSIDE

1/#83ロバート・シュワルツマンプレマ・レーシング/#75佐藤琢磨レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング/#5パト・オワードアロウ・マクラーレン
2/#9スコット・ディクソンチップ・ガナッシ・レーシング/#60フェリックス・ローゼンクヴィストメイヤー・シャンク・レーシング・W/カーブ・アガジャニアン/#10アレックス・パロウチップ・ガナッシ・レーシング
3/#4デイビッド・マルーカスA.J.フォイト・エンタープライゼス/#7クリスチャン・ルンガーアロウ・マクラーレン/#28マーカス・エリクソンアンドレッティ・グローバル
4/#3スコット・マクラフランチーム・ペンスキー/#76コナー・デイリーフンコス・ホーリンガー・レーシング/#20アレクサンダー・ロッシエド・カーペンター・レーシング
5/#8キッフィン・シンプソンチップ・ガナッシ・レーシング/#33エド・カーペンターエド・カーペンター・レーシング/#14サンティノ・フェルッチA.J.フォイト・エンタープライゼス
6/#30デブリン・デフランチェスコレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング/#77スティング・レイ・ロブフンコス・ホーリンガー・レーシング/#21クリスチャン・ラスムッセンエド・カーペンター・レーシング
7/#17カイル・ラーソンアロウ・マクラーレン/#45ルイス・フォスターレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング/#90カラム・アイロットプレマ・レーシング
8/#06エリオ・カストロネベスメイヤー・シャンク・レーシング・W/カーブ・アガジャニアン/#27カイル・カークウッドアンドレッティ・グローバル/#6ノーラン・シーゲルアロウ・マクラーレン
9/#23ライアン・ハンター-レイDRR-キュージック・モータースポーツ/#24ジャック・ハーベイDRR-キュージック・モータースポーツ/#26コルトン・ハータアンドレッティ・グローバル・W/カーブ・アガジャニアン
10/#15グラハム・レイホールレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング/#98マルコ・アンドレッティアンドレッティ・ハータ・W/マルコ&カーブ・アガジャニアン/#66マーカス・アームストロングメイヤー・シャンク・レーシング・W/カーブ・アガジャニアン
11/#18リナス・ヴィーケイデイル・コイン・レーシング/#2ジョセフ・ニューガーデンチーム・ペンスキー/#12ウィル・パワーチーム・ペンスキー

佐藤琢磨、インディ500決勝へ向け注目度急上昇。カーブデイは「80点に届くかどうか」、トラブル乗り越え準備着々

第109回インディアナポリス500マイルレースで予選2番手、フロントロウスタートを獲得した佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング/以下RLL)は、レース当日まで俄然忙しいスケジュールに追われることになった。

チーム・ペンスキーのジョセフ・ニューガーデン、ウィル・パワーが車両違反で最後列に押しやられたとはいえ、48歳でスポット参戦の琢磨が、あとわずかでポールポジションのフロントロウに並んだことは大きなニュースとなった。また、ルーキードライバーで新チーム、プレマのロバート・シュワルツマンがポールポジションとなったことも、インディアナポリスの話題をさらった。

予選2日目終了直後から、琢磨は注目の的となった。およそ3週間前のクラッシュで、マシンを全損してしまったこともビハインドストーリーとして深掘りされ、チームメイトのグラハム・レイホールが予選で不振に陥ったことも、さらに琢磨が浮き立つ要因のひとつになった。

琢磨にスポットライトが当たってくれることは喜ばしいし、日本のファンにとってうれしいニュースなのは間違いない。だが、これまで書き続けて来たように、オープンテストのクラッシュからここまでの経緯は時間と闘いながら、琢磨とRLLのクルー、エンジニアが愚直に働き、マシンの速さを追い求めてきた結果だ。オープンテストでのクラッシュからカーブデイまで、決して順風満帆な3週間ではなかった。

グリッド最前列予選2番手という報われる結果を得た反面、注目度と忙しさは比例する。翌月曜日のプラクティスからTVスクリーンに映る時間は圧倒的に長くなり、メディアデイで琢磨に飛ぶ質問も多くなった。

月曜日のプラクティスはレースセッティングでの走行となり、それを3番手で終えて好調さを裏付けていたが、琢磨への注目度はさらに高まったと言えるだろう。しかし、琢磨は「予選の後に言ったように、決勝のセッティングは50点くらいだったのが、今日の走行で70点くらいにはなりました。残りのカーブデイの2時間でどこまで仕上げられるかですね」と、慎重に決勝へ向けた準備を進めていた。

金曜日のカーブデイは500マイルの決勝前最後の走行となる。相変わらず雨予報に翻弄されるインディアナポリスだが、この日は朝から青空が広がった。

琢磨は朝に行われたインディ500ウイナーのブルージャケット・プレゼンテーションでブリックヤードに並び写真に収まった。

インディ500勝者だけに与えられるブルーのジャケットを纏い、リック・メアーズ、エマーソン・フィッティパルディ、マリオ・アンドレッティ、ジョニー・ラザフォードら、インディ500のレジェンドたちと記念撮影に収まる姿は、唯一の日本人ドライバーとして誇らしく見えた。

午前11時に予定通りグリーンフラッグが振られると、琢磨の75号車はコースに出て行った。パック(集団)に入り、周回を重ねて、レースのスティントを想定した長いランが続いた。2度のピットインと、その度にニュータイヤを投入して、セッション半ばにはトップ10に入った。28周目には225.415mphをマークして、ペンスキーのニューガーデンに続いて2番手のタイムとなった。

セッションも残り15分となる頃、琢磨は最後のセッティング変更を試すべくコースに出たが、しばらくすると琢磨がスロー走行する姿が場内のスクリーンに大写しにされた。明らかにペースが落ちたカーナンバー75のマシンはピットロードに向かう途中で、ゆっくりと止まった。

これまでプラクティス中でもマイナートラブルはあったものの、マシンを止めなくてはいけないほどのトラブルはなかったが、最後の最後でマシンをピットに導くことはできなかった。

「ストレートですこし違和感があり、アクセルを戻してターン1を過ぎたのですが、少し踏み込むといきなり右に左にマシンが振られて、危うくウォールに当たるところでした。なんとか立て直して運良くマシンをとどめる事ができて良かったです。右側のドライブシャフトに問題が出て、左側だけで駆動しているような状態でした」と、トラブルの状況を話す琢磨。さらに、カーブデイの手応えと決勝への意気込みを続ける。

「それまでは順調でしたが、最後のセッティングの違いを試せなかったことと、ピットストップ練習ができなかったことは心残りです。マシンのフィーリングは良くなってきていましたが、ペンスキーやチップ・ガナッシのマシンと一緒に走っていないので、一緒に走って(ペースを)確認したかったですね。月曜日(時点での仕上がり)は70点と言いましたが、今日は80点に届くかどうかかな。ここまで来たので、レースでは試していないことはしないですし、気温や路面にうまく合わせられるかどうかですが、試したセッティングを良く分析して決勝のマシンをまとめていきたいと思います」

もし、ふたたびオープンテストの悪夢となっていたのなら、例えフロントロウに並んでいても、3度目の栄冠は遠のいていただろう。むしろ今日のトラブルはレース中に発生せず、プラクティス最後の日に出たことは幸いしたのではないか。そう思うと2025年の佐藤琢磨はついているように思うのだが、結果は500マイルを走った後にわかる。

インディ500決勝 前半を支配した佐藤琢磨、痛恨のピットミスで同レース3勝目逃す「自分のミスだった」

第109回インディ500のレース前半。インディアナポリス・モーター・スピードウェイで最も輝いていたのは間違いなく佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)だった。

51周という大会最多リードラップを記録し、3度目のインディ500制覇に向けて完璧なレースを展開していた佐藤。だが、82周目のコーションを機に動いた運命のピットストップで全てが変わった。

スタート直後から積極的な走りを見せた佐藤は、11周目にロバート・シュワルツマン(プレマ・レーシング)とパトリシオ・オワード(マクラーレン)を立て続けに交わしてトップに立った。

19周目の3回目のコーションを機に1回目のピットストップを実施すると、一時8番手まで後退したものの、リスタート直後に2台を抜き去って6番手まで順位を戻す。

その後、ジャック・ハーヴィー(DRRキュージック・モータースポーツ)のピットインにより47周目に再びトップに浮上すると、佐藤はレースを支配し続けた。チームとの見事な連携、そして冬の間からエンジニアたちが作り上げてきたマシンが、勝利への確かな手応えを佐藤に与えていた。

「この3週間、チームクルーたちは、オープンテストで大破したクルマを作り直すという、本当に信じられないような仕事をしてくれたと思います」と佐藤が後に振り返ったように、チーム一丸となって臨んだこの日のレースは、まさに理想的な展開を見せていた。

「今日も序盤はアクシデントが色々とあったのですが、非常に落ち着いてレースをスタートすることができました。序盤は大きくリードし、最多リードを取って、ピットストップでも毎回、1位でコースに戻るという、これ以上ない環境と条件の中で走ることができました」

だが、82周目にリーナス・ヴィーケイ(デイル・コイン)のクラッシュで4回目のイエローコーションが提示されたその瞬間が、全てを変えた。佐藤はここでピットストップに向かったが、タイヤをロックアップさせピットボックスをオーバーシュート。この一度のミスで少なくとも12台に抜かれ、栄冠への道筋が一瞬にして閉ざされた。

興味深いことに、同じタイミングでピットインしたシュワルツマンも同様にタイヤロックアップに見舞われ、マシンにダメージを負いリタイヤに追い込まれた。冷えたタイヤとブレーキという条件は全車共通だったが、この場面で明暗が分かれた。

「ピットストップの時にピットボックスに止まりきれず、それで全てを失ってしまいました」と語る佐藤の言葉には、チームの期待と努力に応えられなかったプロとしての責任感、そして人間らしい悔しさが滲み出ていた。

「長いコーションの後にピットに入ったんですが、もちろんタイヤやブレーキが冷えていたというのは、みんな同じ条件です。なので、言い訳はできないんですけども、そのたった一回、……いや、けっこう止まりきれなかったんですけど、それで全て失ってしまいました」

ピットストップの失敗により、17番手まで順位を落とした佐藤だが、それでも持ち前の集中力と粘り強さを発揮。最終のピットストップを終えると、ノーラン・シーゲル(マクラーレン)をオーバーテイクして12番手に浮上し、さらにエリオ・カストロネベス(メイヤー・シャンク)の燃料切れによるピットインで最終的に11位でフィニッシュした。

「集団の中では順位を上げるのが非常に難しかった」と佐藤が語るように、一度順位を落とすとポジションアップの機会が限られるのがインディ500の特徴でもある。

レースは同じホンダエンジン勢のアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)が念願の初制覇を達成する形で幕を閉じた。パロウは残り14周でマーカス・エリクソン(アンドレッティ)をパスして初のリードラップを奪うと、そのまま守り切ってフィニッシュした。

この結果について佐藤は、「ホンダHRC、そしてHRC USの皆さんが、この2年間の悔しさを見事に晴らす素晴らしいカムバックだったと思います」と、ホンダの奮闘を称えた。

レース後の佐藤の言葉は、失意の中にも前向きな意志を感じさせるものだった。

「非常に悔しいですが、もしまたチャンスがあれば挑戦したいですし、今日はもう本当に自分のミスで全てを失ったかと思うと、本当に言葉がないです。すみません」

そして最後に、「気持ちを改めて、今後も色々なことに挑戦していきたいと思います。ありがとうございました」と締めくくった。

完璧なレース運びから一転、チャンスを逃した佐藤だが、次の彼の発言は、モータースポーツという競技がチーム戦であることを改めて感じさせるものだった。

「ここまでサポートしてくれたファンの皆さん、スポンサーの皆さん、そしてチームクルー全員に心から感謝したいです」

51周のリードラップという記録は、佐藤とチームの実力を証明するものであり、次なるチャンスへの希望の光でもある。